胃がんとピロリ菌の関係性
ピロリ菌は胃の内壁に感染し、慢性的な炎症(慢性胃炎)を引き起こします。この慢性炎症が長期間続くことで、胃の粘膜が損傷し、細胞の異常な増殖が促進されるリスクが高まります。また、長期の慢性胃炎により、胃の粘膜が腸の粘膜に似た組織に変わる「腸上皮化生」が進行します。この状態は前癌状態とされ、胃がんの発生リスクを大きく高めると言われています。また、ピロリ菌はアンモニアや活性酸素種などの発がん物質を生成し、これらの物質が胃粘膜を直接損傷し、がんの発生を助長するとも知られています。
また、国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクトの調査では、ヘリコバクター・ピロリ菌の陽性者では、胃がんリスクが5倍になると報告されています。
ピロリ菌とは
ヘリコバクター・ピロリは、胃の内壁に感染する細菌のことをいいます。通常、子どもの頃に感染し、一度感染するとピロリ菌が排除されることは少ないと言われています。ピロリ菌は、胃炎・胃潰瘍・胃がんの原因となると言われています。
ピロリ菌の除菌について
ピロリ菌に感染した場合には、除菌治療を行うことが必要となります。除菌治療には通常、抗生剤と制酸剤が使用されます。ピロリ菌の除菌成功により、胃がんの発生リスクを大幅に減少させることが期待されます。
ピロリ菌に感染した場合でも、除菌治療によりピロリ菌を除去することができます。ピロリ菌感染の有無は検査ですぐに確かめることができ、除菌治療はお薬を1週間服用するだけです。またピロリ菌に感染した場合でも、胃カメラ検査で胃潰瘍、十二指腸潰瘍、慢性胃炎と診断できる場合には、ピロリ菌の除菌治療を健康保険適用で受けることができます。
ピロリ菌の検査方法
ピロリ菌感染の有無を確かめる検査には、細菌そのものを確認する検査や細菌が起こす反応を調べる検査、細菌による酵素反応を調べる検査などがあります。検査を大きく分けると、胃カメラ検査時に組織を採取して調べる検査と、それ以外の方法があります。内視鏡検査で胃炎と診断された方についてはピロリ菌の検査が保険適用されます。そうでない方はピロリ菌の検査は自費診療になります。
◆胃カメラ検査で行うピロリ菌感染検査
【組織鏡検法】
胃カメラ検査で胃の組織片を採取して染色してから顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を確認します。
【培養法】
胃カメラ検査で胃の組織片を採取して1週間程度の期間培養し、ピロリ菌の有無を確認します。
【迅速ウレアーゼ法】
胃カメラ検査で胃の組織片を採取し、ピロリ菌が生成するアンモニアの量を調べて、ピロリ菌の有無を確認します。検査当日または翌日までに検査結果がわかります。
◆胃カメラ検査を行わないピロリ菌感染検査
【尿素呼気試験法】
診断薬を服用して呼気(吐く息)を採取し、ピロリ菌の有無を確認します。
【抗体法】
血液や尿を採取して、ピロリ菌抗体を測定する検査です。
【抗原法】
便を採取してピロリ菌の反応を調べ、感染を診断します。
ピロリ菌除菌の流れ
①ピロリ菌の検査
ピロリ菌感染検査(尿素呼気試験法・胃カメラ検査など)を行い、感染の有無を確認します。
②検査結果の確認
検査結果が陰性だった場合、除菌治療は必要ありません。
陽性だった場合、除菌治療をご希望される場合には治療を行います。
③1回目の除菌治療
抗生剤とその働きを強める制酸剤を朝夕の1日2回、1週間服用します。
④除菌治療の結果確認
除菌治療は失敗する可能性もあります。判定検査は、服用終了後4週間以上経過してから行います。
除菌判定で陰性になった場合は除菌が成功しているため、治療は終了となります。
陽性だった場合には、2回目の除菌治療を健康保険適用で受けられます。
⑤2回目の除菌治療
抗生剤を変更した後は1回目と同様に、1日2回朝夕、1週間服用します。
⑥除菌治療の結果確認
除菌判定も1回目と同じタイミングで行います。
1回目と2回目の除菌治療でほとんどの方が除菌に成功しますが、失敗した場合は3回目の除菌治療も可能です。ただし、3回目からは自費診療となります。
【ピロリ菌の除菌治療成功率】
1回目の除菌治療の成功率は80~90%程度、2回目の除菌治療の成功率は90%程度とされています。
ピロリ菌感染は胃がんの主要なリスク要因の一つです。感染が確認された場合には、早期に適切な治療を受けることが重要です。また、定期的な健康診断を受け、胃の状態をチェックすることも胃がん予防に有効です。
胃がんを予防するためには胃がん検診を受けましょう!
当院では、練馬区胃がん検診を実施しております。過去にピロリ菌を除菌した方も、胃カメラ検査を受けたことがない方も、胃カメラ検査を行うことで、ご自身で食道や胃の状態を適切に診断することが重要です。胃がんの早期発見・胃がんを予防するためにも胃がん検診を毎年受けるようにしましょう!
院長メッセージ
「患者様に安心と安全と笑顔をお届けしたい。」これが当院の理念です。
「苦しい胃カメラや大腸カメラは受けたくない」・「胃カメラと大腸カメラで仕事を休むこともなかなかできない」・「日々の生活に甘んじてしまい、ついつい後回しにしてしまう」と感じている患者様に向けて、安心安全な胃カメラ検査・大腸カメラ検査を実施しております。また、患者様の負担を考えて、胃カメラ検査と大腸カメラ検査も同日に受けて頂くこともできます。また、内視鏡検査だけではなく、患者様に「安心」と「安全」と「笑顔」を届けるために、高血圧、糖尿病、脂質異常症といった脳卒中や心筋梗塞の原因となる生活習慣病の治療のお手伝いもしたいと思っています。ぜひお気軽に当院までご相談下さい。